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世界のB級グルメ/13 ビュッフェ in アメリカ

 現地食探求はバックパッカーのたしなみ。世界のB級グルメを紹介します。今日のお題はビュッフェ。食べ物ではなくアメリカの食べ放題レストランですが、なかなか興味深い場所ですので紹介したいと思います。
 ※ トップ画像はラスベガスのホテル・ビュッフェ

 ニューヨークやサンフランシスコのような大都市観光は別ですが、アメリカは地方の公共交通機関が乏しいので、国立公園などに行く場合、レンタカーで自分で周るのが必須です。
 トラタロウも3回ほどレンタカーでアメリカを周りましたが、食事場所はコンビニ~レストランまで様々。そんな中で出会うと嬉しいのがビュッフェの店でした。

レンタカーでアメリカ
1回目のレンタカー旅行の愛車
フォード・マスタングでビビッた

 アメリカに来たのだからとステーキ、ハンバーガー、ホットドック、七面鳥etcと色々なアメリカンを堪能し、みんな美味いのです。ところが不思議なことに続けて食べるとあきるのですよ。そんな時にビュッフェの店があると色々な料理(特にアジア系)を食べられてリフレッシュできるので重宝します。

 ※ アメリカ・レンタカー旅行の様子はこちらで見れます
 海外旅行記NO49 アメリカの国立公園 と巡礼『大草原の小さな家』①グランドティトン編

目次

ビュッフェに関するQ&A

Q1 ビュッフェとは何か?

 いやもうほとんど日本語化していますが、「多種類の飲食物を、セルフサービスで、好きなだけ食べられる」飲食店の形態です。

 英単語としての Buffet を辞書で調べてみると
① 飲食物を置くカウンターや台(本来はこれだったのかな)
② 簡易食堂列車食堂(アメリカではレストランには分類されないとか)
➂ 立食パーティやセルフサービス方式の食事
ということです。
 Buffet には本来は「食べ放題」(英語でAll-you-can-eat)という意味はありませんでしたが、現在は有り有りですね。

 意味の②を見て思い出したのが、かつて東海道新幹線などにはビュッフェ車輛がついてていたこと。知らない世代だと「新幹線で食べ放題?」と誤解されるかも(笑)
 高速化により食堂車が廃止され、代わりに置かれたのが立食式の簡易食堂だったのです。今では食堂車も含めて廃止されてしまったので鉄オタの知識ですね。

新幹線
初期の新幹線、懐かしい

Q2 Buffet は「ビュッフェ」と読むの?

 Buffet はもともとフランス語で、「ビュッフェ」という読みはフランス語の発音にかなり近い感じです。従来「ブッフェ」「バフェ」「ブフェ」と様々な表記が使われてきましたが、最近は「ビュッフェ」が主流になっていますね。
 英語でも同じスペルで使われる借用語ですが、読みは変化して「バフェイ」という感じらしです。少なくとも「ビュッフェ」では通じないようです。

 英語はケルト、ゲルマン、ギリシア、ラテン語などが混入するヤヤコシイ言語ですが、フランス語からの借用語が30~40%もあります。

 なぜかと言うと1066年に「ノルマン・コンクエスト」(ノルマンの征服)という歴史的事件がありました。
 フランス南西部ノルマンディー(第二次世界大戦末期の上陸作戦でも有名)に住んでいたノルマン人が海を渡ってイギリス南部(イングランド)を征服し、王朝を築きました。
 これにより仏語を使う支配者が英語を使う国民を被支配する状況となり、英語に多くの仏語が流入します。

バイユー
ノルマン・コンクエストを描いた
バイユーのタペストリー

 食物関係で有名な話はこれ。牛・豚・羊はそれぞれ英語で cattle、pig、sheep ですが肉になるとcattle meatとは言わず beef ( boeuf )、pork ( porc )、mutton ( mouton ) になりこれらは仏語からの借用語が元なのです。
※ ( ) 内はフランス語の表記。
 英語を使う人々が飼い育てた家畜を、仏語を使う支配層が食べることを象徴しています。

牛
これは英語です
ステーキ
こうなると仏語

Q3 ビュッフェはいつ始まったの?

 源はスウェーデンなど北欧にあったスモーガスボード( Smorgasbord )という習慣でした。スモーガス(パンとバター)・具をボード(机)に置いて自由に食べてね、というものです。
 アメリカには独・北欧からの移民が多かったので、これをヒントに1950年代にラスベガスのギャンブル・ホテルでビュッフ形式が始まり広まっていきます。
 この方式のメリットは
① 朝から晩まで賭博客に食事を提供することで集客につながる。
②    々  開いていてもセルフなので人件費が安い
などですが、近年ラスベガスは賭博だけでなくリゾート地としても開発されていますので、ブッフェの高級化による集客も期待されています。

    賭博と軽食
 賭博に寸暇を惜しむ人は、手軽な食事を好むようです。マグロを使った巻物を鉄火巻といいますが、博打場(鉄火場)で客に供された飲食が語源になっていると言われます。サンドウィッチもカード博打狂いだったサンドウィッチ伯爵に由来します。海軍卿だった彼の名は地名(サンドイッチ諸島)にも残りました。

ラスベガス1
巨大ギャンブル・ホテルが並ぶ
ラスベガス2
夜もにぎやかです

    独・北欧の人々は英語の達人
 アメリカに独・北欧からの移住が多かった理由の一つが言語の類似性でしょう。
ドイツ人の祖先はゲルマン人(German、英語読みするとジャーマンでドイツの形容詞、ジャーマン・ポとかとか)といいますが、北欧の人々も北方系ゲルマン人でノルマン人と呼ばれました。
 そう先ほど登場したノルマン人と同じです。10世紀初め北欧からフランスにたびたび遠征(ようは略奪です)に来ていたノルマン人を、仏王が懐柔するため土地を与え臣下にしたのがノルマンディーの始まりでした。
 ゲルマン人は5世紀から西欧各地に侵入し、アングル族サクソン族はイギリス南部に諸王国を建て、これがイギリスの原型になりました。南部イギリス(イングランド)の人々はアングロ・サクソン ( Anglo-Saxons )と呼ばれるようになります。
 彼等が中心となって建てた英・米・豪・ニュージーランド・カナダなどの国々はアングロ・サクソン国家で英語が共通語。
 まとめると独・北欧の言語は英語と親戚関係にあり、文法・単語が類似しています。別の表現をすると独・北欧の人は英語が学びやすく得意。トラタロウがこれらの国々を訪れた時も英語だけで完全に通用しました。
 その辺のおばちゃんに道を聞いても、トラタロウよりよほど達者な英語でペラペラ教えてくれます。ただ勉強は必要で、戦前の教育しか受けていないおじいさんに英語は通じませんでした。

Q4 ビュッフェとバイキングは違うの?

 基本的な形態は同じです。日本では1950年代末に帝国ホテルの社長が北欧のスモーガスボードに関心を持ち導入をはかります。11代帝国ホテル料理長にして、フランス料理普及の功労者の一人である村上信夫氏が日本向人けに形を整えました。
 特に名前はスモーガスボードでは馴染みがなさすぎるので、当時ヒットしていた映画『バイキング』の食事シーンやイメージから「バイキング」と名付けられます。1958年にオープンしたインペリアルバイキングが成功したことで、食べ放題=バイキングという名称が日本に広まりました。

    バイキングとはノルマン人のことです
 今回やたらと出てくるノルマン人はスウェーデンノルウェーデンマークの北欧三国人の祖先です。親戚のゲルマン人は5世紀から西欧に侵入し、英・仏・伊といった国々の源を築きました。ノルマン人は遅れて9世紀ごろから西欧に侵入して交易、時として略奪を行います。
 バイキングは彼等がフィョルドの入り江(Vik)に住んでいたため、または戦士を意味する別名です。トラタロウの世代だとアニメになったスウェーデンの児童文学『小さなバイキングビッケ』を覚えています。
 ノルマン(Norman)はNor=北、Man=人を意味します。ノルウェー(Norway)はバイキングが使った北の道(北方航路)から名付けられました。

バイキング1
発掘されたバイキング・シップ
首長が死ぬと船に遺体・副葬品
を納めて埋める船葬墓の習慣があった。
バイキング2
船葬墓を準備する様子

 ※ 「アメリカ、バイキング」で検索すると意外な史実が出てくるのでやってみて。
コロンブスより500年も早かったんですね。日本のマンガ『ヴィンランド・サガ』もこの関係をモチーフにしています。

Q5 ビュッフェにはどんな種類があるの?

 ビュッフェは多様性が売りで、自由度が高いので種類はあまり厳密ではありません。
① ホテル・ビュッフェ と 町ビュッフェ
② 欧米系料理 と アジア系料理 
➂ リーズナブル・ビュッフェ と 高級ビュッフェ
ぐらいの大ざっぱなくくりしか無いような気がします。
②に関しては「中華」「イタリアン」「寿司・海鮮」「ケーキ」「焼肉」などの専門ビュッフェがある日本の方がよほど多いですね。

画像で紹介いろいろなビュッフェ

ラスベガスのホテル・ビュッフェ

 ラスベガスはダウンタウン地区の老舗ホテルのビュッフェです。飲食自体を目的にした高級ビュッフェもありますが、ここは「はやく食ってギャンブルに戻れ」的な感じ。
 内装もテーブルまわりもシンプルです。卓上の調味料はスーパーで売っているヤツをそのまま置いてありました。
 お値段はリーズナブルです。

タバスコ
タバスコが見慣れたヤツだった

 

ローストビーフ
ローストビーフ切ってくれます
町ビュッフェだと高級店を除いて
こんなサービスはありません。
トレー
ちょっと無骨なトレー
ローストビーフ2
厚切りローストビーフ
皿1
洋風主体、中華が少し
チェリーパイ
チェリーパイ大きい

ヴァージニア州のアメリカンなビュッフェ

アメリカン1
ステーキがオススメです

 何がアメリカンかと言うと、とにかく肉が中心。大量のビーフとチキンが用意されている豪快かつシンプルな構成。
 あとはポテト・パスタなどの付け合わせ、大量のサラダ、デザートの計4分類のみ。
 ある程度若くないとついていけません。まだ40代だったのでギリギリOKでした。

アメリカン2
肉(左)とポテトが大量
ステーキ5
ステーキ3枚が限界だった
サラダ好き
アメリカ人はサラダ好き
ブロッコリーとかは生で食べます
皿2
右端の赤いのはビーツ
皿3
肉と野菜だけで手いっぱい
デザート
デザートは貧弱、食べるけど

これは日系ビュッフェなのか?

Hibachi

 ミズーリ州の田舎町にあった店。Hibachi Grill とは炭を使うポータブルな火鉢を使い、各席で具材を焼いて食べる様式。一応日本食の分類になるようです。
 ここはビュッフェもあるので、それしか利用しなかったけれど、メニューが少しだけ日本食寄りでした。

寿司1
寿司は握りもあって良い方です
寿司2
左上の茶色は稲荷ずし

 アメリカの寿司の特徴として、巻物の海苔が内側に巻かれていること。真っ黒な食材はあまり無いので、昔は海苔が相当気持ち悪がられたための対策。ここは外側に巻いた物もあるので、ある程度受け入れられたようです。稲荷ずしがあるのには驚いた。

寿司3
ワサビ、紅しょうが、箸もある
シイタケ
シイタケ肉づめ
生シイタケあるのかよ
イカ
右下イカがあるのは珍しい
海産物
比較的海産物メニューが多い
味噌汁
豆腐とワカメの味噌汁があった
これアメリカ人もOkなのか?

 ※ Hibachi Grill についてはこちらのHP  に詳しいです

町ビュッフェの王道が中華です

香港1

 レンタカーでアメリカの田舎を周っていると、一番遭遇するのが中華ビュッフェの店。
けっこうな田舎都市(田舎町だとスーパーかダイナー・簡易食堂ぐらいしかありません)にもあるので中華料理パワーすごいと思う。
 リーズナブルな価格でアジアの味覚を楽しめるのがなにより。

焼きそば
チャーハン、焼きそばが定番
あさり
アサリがあった珍しい
アジア
アジアの味だなあ
スープヌードル
スープヌードル(左)もある
茶
中国茶もオーダーできる
寿司4
中華で寿司?いやもう寿司はどこで
出てもおかしくありません。
デザート2
デザートはどこもありきたり
フォーチュンクッキー
「こんどの週末はなにか違ったことを楽しめる
でしょう」だそうです。

 アメリカン中華の特徴として「フォーチューンクッキー」(占いクッキー)があります。会計の時にもらえる菓子で中が空洞になっており、占いや警句が書かれた紙片が入っています。中国本土にも無いアメリカン中華独特の習慣です。日本ではAKB48のヒット曲で名前は知られていますが、何なのかは知られてないかな。味はぜんぜん美味しくありません(笑)

ビュッフェは Very American

 ビュッフェ形式はその利便性からひろまりましたが、Very American (とてもアメリカらしい物)だと思います。※古典的なVery Americanは野球、ホットドック、アップルパイ
 アメリカ人が外食で望む要素が「選択肢が多いこと」。

 日本にもあるサンドイッチ・チェーン店が SUBWAY ですが、アメリカのそこでは慣れないと注文が大変です。なにせパンの種類・パンの焼き方・具材・野菜の種類・つけ合わせ・ソース・持ち帰りor店内などすべて自分で選択しないと注文ができないのです。
 選択を次々聞かれ、当然全部英語なので、英語初心者トラタロウには大変でした。

サブウェイ
ライ麦パン、ハーフ、焼いて、ビーフ、ソース無し、
ピクルス、店内食と7つの選択をします。
あっ、支払いの選択もあるか。

 アメリカは多民族・多宗教国家であり、民族・宗教で飲食物に制限があることが選択肢を多くした一因でしょう。近年はヴェジタリアン、ヴィーガン(完全菜食主義者)の増加も影響しているかな。
 ビュッフェ形式は多くの選択肢があるので、アメリカ向き、Very American です。

ユダヤ教徒
飲食物の規定がすごく厳しい正統派ユダヤ教徒。
ビュッフェ形式ですら対応は難しいかも。

 コロナ状況下でビュッフェ業界も大打撃を受け、廃業・倒産が相次ぎました。最近は物価高の中で「お得感」が高いため復活しつつあるとか。

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この記事を書いた人

 トラタロウは元世界史・地理の教員です。授業のネタにするため毎夏・冬休みにバックパッカーとして海外旅行に出かけ、83ヶ国を訪れました。旅行情報や旅ネタ、海外食生活を紹介していこうと思います。
 2022年(令和4年)末よりマレーシアに移住しました。クアラルンプールに住み、姉妹ブログ『KLダイアリートラタロウ』を作って、移住やマレーシアの情報を発信しています。よろしかったらご覧ください。
https://www.logrecodocu.website/
 
 

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