現地食探求はバックパッカーのたしなみ。世界のB級グルメを紹介します。
今日のお題はナシ・チャンプル。食べ物ではなく、食べ方を意味しますが、マレーシア・インドネシアではポピュラーなスタイルであり、中国やベトナムなど周辺国にも広まっています。
ナシ・チャンプルとはどんなスタイル?
初めてナシ・チャンプルに遭遇したのは、1993年に初めて東南アジアを周ってマレーシアに入った時。屋台風の簡素な店なのに十数種類のおかずが入ったバットが並び、美味そうなことこのうえなし。
でも、どうやって注文するのか、値段はいくらなのか全然見当がつきません。困惑していると店のおばちゃんが、お皿にご飯を盛り、好きなおかずをよそえと教えてくれました。
これはマレーシア・インドネシアに始まるスタイルで、お皿に盛ったご飯の上に好きなおかずを数種類選んでいただきます。ナシ(nasi)はマレー・インドネシア語(マレーシア・インドネシアはほぼ同じ言語を使います)でご飯、チャンプル(campur)は混ぜるという意味。
本当に混ぜるわけではなく、いろいろなおかずを盛るというような意味ですね。
ナシ・チャンプルの第一歩は店員さんに「ナシ・サトゥ」(ご飯ひとつ)と言うこと。店で食べる場合は「マカン・シニ」(ここで食べます)と言うか、お皿を指さします。お持ち帰りの場合は「ミンタ・ブングス」(持ち帰りで)と言うか持ち帰り容器を指させばOK。
マレーシアは多民族国家で英語が共通語となっているので「Rice one」「Here」「Take away」など簡単な英単語でも通じます。
あとは美味しそうなおかずを選ぶだけ。
思いつくままにナシ・チャンプルの特徴をあげてみます。
・おかずは店によるが10~20種類ぐらい。スープはありません。
・好きな物を好きな量だけよそっても良いが、バイキングではないので多く取るほど料金は上がります。
・自分でよそう(マレーシアはこれが多い)場合と店員によそってもらう場合があります。
・野菜系おかず、肉魚系おかずに分かれるのでヴェジタリアンにも対応。
・飲み物の注文も聞かれますが、頼まなくてもOK。でも多くの人が人気のテアイス(アイスミルクティー)などを頼むし、美味しいのです。酒類は提供されません。
・スプーンとフォークでいただきます。フォークでおかずやご飯を集めて、スプーンですくって食べる感じ。
※ 2022年(令和4年)11/30よりクアラルンプールに移住しました。フォークとスプーンの使い方はよく見ると人によって様々ですね。何でもありがマレーシアです。
インドなどと同じく手食文化圏だったので、今でも手で食べる人もいます。ナイフは無いので骨付き肉・魚の場合は手で食べる方がいいかも。
・朝は麺類やパンなど朝食用のメニューを並べる店もあります。
・朝食時~昼食時のみの営業で、夜はやらない店も多い。オフィス街だと昼食時のみの店も。屋台形式で持ち帰り専門の所もあります。
・おかずはむきだしのままですが、ハエがたかる所など見たことはありません。
ナシ・チャンプルの困ったところ
とにかくナシ・チャンプルの良いところは様々なおかずや量を選べること。海外で食堂に入っても、よほどその国の料理に詳しくなければ選ぶのは困難。ガイドブックにのっているような料理を選ぶのが関の山ですし、量も選べません。ところがナシ・チャンプルは簡単に選べるし(はずれも出ますが)、量もお好みのまま。
そんなナシ・チャンプルの困ったところは、会計をするまで料金が分からないこと。おかずには値段表示はありません。聞けば教えてくれますが、種類が多すぎるし、誰も聞いてません。
お皿に盛った料理を空いたテーブルに置いて待っていると(食べていてもOK)会計係が来ておかずの種類と量を見てパッと暗算し、金額を書いた紙片をくれるので帰りにレジに紙片を出して払います。飲み物を頼んだ場合は、飲み物代も含めてくれます。店によってはおかずを取り終わった最後にレジが設けられていて払います。
最初は外国人だとボラれるんじゃないかと心配しましたが、マレーシアで数十回ナシ・チャンプルを食べても法外な料金を請求されたことは1回もありませんでした。会計係も基準はあるでしょうが、感覚で値付けしているので、同じ店で・同じおかずで・同じ量で・同じ人が値付けしても同じ値段にはならないのは確実。でも誤差の範囲と思いましょう。
これを選ぶと高くなる
おかずに値段表示はありませんが、何十回も食べているとある程度の傾向は見えてきます。
一番高いおかずはエビ料理。これをよそうといきなり高くなります。理由は簡単、原価が高いのです。クアラルンプールはイオンを始めとする外資系スーパーも多いのですが、安く買うなら地元民がいくチョーキットやプドゥなどのローカル市場。ここでもエビは肉類の倍くらいの値段なのでエビ料理は高くて当然。イカ料理もそこそこ高い。
逆に安いのが野菜系おかず。この画像は野菜系おかずの皿ですが、肉を入れた場合に比べて半値以下でした(2022年9月で¥132)。ヴェジ系でもテンペなどの大豆加工品は肉に近い満足感を得られます。
肉はイスラム教国なのでチキンが主体で、魚も同じくらいの値段。イカもありますが、大イカは安いのに小イカはエビと肉類の中間ぐらいの値段。
おかずの量の基準はトレイごとに置いてある中型スプーン1杯分。でも量よりおかずの品数が値付けでは重要なようです。バイキング感覚で多品種少量盛りつけると意外に高くつきます。
一番安くすませる方法は、野菜系おかず1~2品のみで煮汁多め。節約志向の現地人がよくやっています。トラタロウも軽く食べたい時はこれをやります。
3つの味が楽しめます
ナシ・チャンプルの魅力は選択肢の広さですが、マレーシアの場合すごいのが選択肢がさらに3倍になる事。マレーシアはマレー人、中国人、インド人の3民族が暮らす国で、ローカル食堂もこの3つに分かれ、それぞれ個性的な料理を提供されます。
3民族のナシ・チャンプルを簡単に紹介します。
マレー料理
先住民マレー人は人口の7割を占める多数派でマレー料理店はどこにでもあります。
多くのマレー人はムスリム(イスラム教徒)であるため豚肉は一切なし。肉は鶏肉(アヤム)が中心、時々牛肉(ランブ)のおかずがありますが、ビーフレンダンという牛肉煮込み料理は絶品。
味付けの基本はサンバルという甘辛い味噌風調味料。大豆の発酵食品テンペをサンバルで煮込んだ料理は、ベジタリアン物だが肉に近い風味・食感で満足感あり。
海に囲まれた半島・島嶼国家ですのでイカンと呼ばれる魚介類も人気。魚は揚げたり、サンバルで煮込んだり、サンバルを塗って焼くのがポピュラー。マレー料理はそんなに辛くはありませんが、サンバル味が強いので薄味野菜料理や生野菜と組み合わせるのが良いですね。
※ トラタロウ的にはあまり辛くないのですが、2023年8月に日本の友人ご一家が来られたのでナシ・チャンプルに案内したところ大層辛いという感想でした。
慣れないと辛いのか。一応マレー系住民が多くて本気で辛いカンポン・バルなどの店は避けたのですが。
※ 友人ご一家ご案内の様子はこちら
友人ご一家が来たのでKLを案内してみた①MUST・GO編
中華料理
中国から東南アジアへの移民は、昔は華僑(僑は旅人の意)と呼ばれましたが、現在は各国の国民として根付いているため華人とよばれます。マレーシアの華人は人口の2割ほどですが、経済活動を握るため、都市部ではかなり多数派。
クアラルンプールには観光地としてチャイナタウンがありますが、あちらこちらに華人が多く住む地域があり、経済什飯(チンチーチャファン)というナシ・チャンプルに相当する食堂があります。英語だとEconomy Riceと表記され、なんじゃいな、と思いますが「お得な日常ご飯」というような意味です。
味は当然中華なので日本人に向く料理が多いですし、八角のような個性が強い香料もあまり使わないのでマイルドな中華ですね。
なによりも豚肉が食べられるのは中華だけ。ムスリムの多いマレー系はゼロですし、ヒンドゥー教徒の多いインド系も豚肉はまず食べません。まれにインド人が中華系で食べていますが、キリスト教徒なのかな。
個人的なオススメはアヒルの卵を塩漬けにした 鹹蛋(シェンタン)。ゆで卵というよりは漬物感覚でご飯に合います。マレー系でも出す店はありますが、中華系が一番多い。半分割で提供されます。
インド料理
インド人は人口の7%ほどですが、華人と同様経済を握るため都市部ではメジャー。特にクアラルンプールには中心部ブリックフィールズにインド人街リトル・インディアができています。インド料理店はヴェジタリアン料理専門店とヴェジ/ノン・ヴェジ(肉料理)両方出す店に分かれます。両方出す店ではヴェジ・コーナーとノン・ヴェジ・コーナーが別れているのが普通ですね。価格はヴェジの方が低めです。
マレーシアのインド人は植民地時代に南インドから来た人の子孫なので、提供される料理もあっさりした南インド風。南インド料理は辛くて有名ですが、マレーシアでは辛さは抑えられ日本人にはとても食べやすいインド料理です。
インド料理は主食の選択肢が多い。ご飯の他にも小麦粉で作った薄焼きパンのチャパティ、米粉で作ったイドゥリ、薄い揚げパンのプーリーなどを出す店。炊き込みご飯のビリヤーニを出す店もあり変化を楽しめます。
※ インドの主食についてはこちらもご覧ください。
世界のB級グルメ/15 朝食 in インド
※ 多くのインド料理店はメニューからの注文で、セルフ選択方式は少ないです。前述のインド人街ブリックフィールズはセルフ選択の店が主流なのでオススメ。
※ カレー、タンドーリチキン、ナンなどがあるため一見インド料理屋に見える店がありますが、ナシ・カンダー(Nasi Kandar)と呼ばれるインド系ムスリム(ママッ・Mamak)の店。
皿に盛ったご飯に好みの主菜をのせ、野菜などの付け合わせ指定しソースをかけてもらう。おかずが並ぶのはナシチャンプルとにていますが、自分でよそうことはありません。まあ定食屋みたいな物です。
マレーシアは1993年から9回訪問しています。ここ30年ですごく発展して便利になった反面、物価も高くなりました。最初は100円台で食べられたナシ・チャンプルが200円台となり、最新の訪問(2022年9月)では円高とあいまって300円台に突入で涙です。
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