現地食探求はバックパッカーのたしなみ。世界のB級グルメを紹介します。
今日のお題はインドの定食ターリー(ミールス)、安くて美味いバックパッカーの味方です。
ターリー(ミールス)とは何か
日本でもインド料理店でランチに出されるあれです。ターリー(Thaali)という円いステンレスの大盆の上に、数個の小さなステンレスの丸皿カトリ(Katori)がおかれ、それにカレーが盛られ、ナンまたはライスと共に供されるあれ。
北インドではターリーと呼ばれますが、南インドではミールス(Meals,英語でそのまんま食事の意ですね)と呼ばれます。全インドで味わえますが本場物は少し構成が複雑です。
南北の違いはなに?
北インド…主食が小麦粉製品中心、カレー系は油を多く使い濃厚な味付け、日本のインド料理店はこの系統が多い。
南インド…主食はライス中心、カレー系はあっさりした味付けで食べやすい、最近日本のインド料理店でも南インドカレーを売り物にする店が増加中。
※インドも北部は冬場は寒いため小麦栽培が中心、南部は暑いため稲作中心となるのが反映されてます。




左の画像はチャパティ生地を揚げたプーリーが主食
どんな食べ物がはいっている?
当然ながら店や値段によって種類、質・量は違いますが、主食の他に
・数種類のカレー系
・スープ系…豆を使うダール、酸味のあるラッサム、野菜を使うサンバルなど
・野菜のおかず…炒めたサブジー、ポリヤル、煮込んだチャトニなど
・つけ合わせ…豆製の揚げセンベイのパパド、漬物のアチャール、ヨーグルトなど
・デザート…すごく甘いインド菓子のミタイ、フルーツ入りヨーグルトなど
どこで食べられる?
大衆食堂からレストラン、ホテルまで、多くの店で提供されています。
南インドだとMeals Ready(ミールスあります)と看板が出てたりします。
いつ食べられる?
基本はランチタイムです。レストラン、ホテルだと基本メニューとして夜でも出すところがありますが、少し高級版になりますね。
どのように食べる?
特に絶対的な決まりはありませんが、カレーやおかずを単品で楽しむだけではなく、それぞれをミックスして自分好みの味を作り出すのがオススメ。インド人はそうやって楽しんでます。
ポイントの一つがパパド。パリパリした豆製揚げセンベイですが、そのままかじるだけでなく、パラパラに崩してご飯にかけ、歯ごたえのアクセントを楽しみます。
いくらで食べられる?
地域や店によって違いますが、定食なので基本リーズナブルなお値段。
30年前初めて食べた時は円に換算すると¥50くらいで、その安さに驚嘆しました。インドも物価が上がりましたので¥50はもう無いですが、大衆食堂なら¥100~¥250くらいでしょう。
「味よし、盛りよし、お値段よし」の満足定食。
観光地や高級店だとまた別なお話になりますけど。

丸いのはパパドです



インドと日本のターリー(ミールス)は違う
日本のインド料理店でも味わえるターリー(ミールス)ですが、値段を別にしても違う点が多々ありますのでまとめてみました。
①基本ヴェジタリアン・メニューです
インド人の4割近くはヒンドゥー教の関係があってヴェジタリアンです。ヴェジタリアン専門店が多いし、インド系航空会社では機内食もヴェジorノンヴェジの選択。
ターリー(ミールス)も基本はヴェジメニューで、それゆえ価格もリーズナブルにできます。ヴェジカレーでも十分に美味しいし、肉が食べたければ別に注文すればよし。
②お代わり自由です
高級店は知りませんが、大衆食堂なら主食もおかずもお代わり自由です。ただ普通の食欲の日本人なら、最初にきた分量で十分満腹になりますね。
➂ナンはつきません、チャパティになります
日本のインド料理店では定食につくのはナンであり、これがインド人のパンと思われてます。間違いではありませんが、ふだんインド人はナンは食べません。外食の時のごちそうですね。
なぜならナンは製造に発酵過程が必要なことと、焼くためにタンドールという垂直型オーブンがいるので、家庭で作るにはハードルが高すぎるため。タンドールがある家なんて、お抱えコックがいる豪邸のイメージです。
ナンを提供するレストランでも、燃料を大量に使うタンドールの維持は大変なので数軒で共同保有したり、専門店から買っていたりします。これに対してチャパティは無発酵かつ鉄板などで簡単に焼けるので小麦栽培地帯で一番食べられる主食です。
チャパティはナンと違った美味しさがあるので、日本のインド料理店でも出してほしい。特にタンドールで焼いたタンドーリ・チャパティはナンに負けないほど美味しい。
※日本のインド料理店のナンは、日本人の好みに合わせてか異常に甘い。インドのそれはアター(精製度の低い小麦粉)を使っていることもあり、もっと素朴な味です。

④ヨーグルトはデザートではありません
フルーツの入ったデザート・ヨーグルトはありますが、よく付いてくるプレーンなヨーグルトはカレーやご飯に混ぜるためです。カレーが辛すぎる場合ヨーグルトを混ぜると辛さを和らげることができます。ちなみにカレーの辛さ指定はできません。
⑤スプーンは使いません、手で食べます
インド人はカレーでも右手のみで食べます。これはヒンドゥー教が浄/不浄を重視し、他者の穢れが移るのを嫌うためです。スプーンなど口に入れるものは、洗ってあっても他者が使ったものは嫌がられます。自分の手で食べるのが一番安全。※左手は不浄の手などで使いません。
外国人だと気をきかせてスプーンをつけてくれることもありますが、ターリー(ミールス)に関しては手で食べた方が美味しく感じるから不思議。日本でやるとドン引かれますが。
※ターリーとカトリを使うのは比較的新しい習慣で、他者の穢れを気にする人は嫌います。昔ながらのバナナの葉が食器に使われ続けるのは、使い捨てで他者の穢れが移らないから。
インド人直伝・ミールスの食べ方のサイトに移動します。

バナナの葉に盛られる料理、食べ終わったら葉ごと丸めて捨てられるので便利(右)

日本のインド料理店のターリーはインド人が作ってない
インドと日本のターリー(ミールス)の違いは多いですが、最大の違いはこれかも。ではインド料理店で働くあの外国人はどこの人かというとネパール人です。インド人の経営する店もありますが、一説によると9割はネパール人といいます。
店によってはなるほどな、という証拠が見受けられます。
a、さりげなくネパール国旗が飾られる(独特の形なので国旗と気づかないかも)。
b、エベレストなどネパールの風景写真がある。
c、モモなどネパール料理がメニューにある。
インドでもモモは売っているので、cはインド人経営の店でもあるかもしれませんが、aとbは絶対ないでしょう。インド人も愛国心強いので。

右の画像がネパールの定食ダルバート、見た目ターリー(ミールス)と同じですね。味は微妙に違いますが

なんでインネパ店がそんなに多いの?
インド料理店だけどネパール人経営の店をインネパ店と呼ぶそうですが、日本でその数2000軒とも言われています。たしかに最近インド料理店多いですよね。インド料理店なんて、その昔は1~2軒しか思い当たらなかったのに、最近は10軒以上ある都市も珍しくないでしょう。
ネパールは山国、内陸国、資源無しの三重苦を抱える国。このような国は農業や工業を発展させにくいのです。山国は平地が少なく農業は困難、内陸国だと貿易港を作って輸出入の活性化もできませんし、資源も無ければ工業化も無理。自国では十分な仕事が無いため、国外への出稼ぎが多くなりますが、その一つがインネパ店なのです。
インドカレー店が増えた理由を解説するブログに移動します。
ネパールとインドは共通点が多く、ダルバート(豆スープとご飯の意)というターリー(ミールス)の兄弟分があります。両者は少し違いますが、ダルバートが作れるコックならターリー(ミールス)も作れるはず。
海外で日本料理店に入ると、韓国人か中国人の経営、味もなんだか微妙という経験があるでしょうが、インド人がインネパ店に行ったら同じ感想を抱くのかな。でもトラタロウを含むほとんどの日本人がネパール人が作ったインドカレーの違和感なんて感じませんし、十分に美味しいからいいですよね。
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