現地食探求はバックパッカーのたしなみ。世界のB級グルメを紹介します。
今日のお題はタコス。メキシコの国民食で名前は知られてますが、日本では食べられる所が限定されているので実態はあまり知られてません。かつて3回ほどメキシコや中米を訪れ、タコス三昧となった記憶を思い出して書きます。
残念なのが画像がフィルム写真の時代の物で、電子化したのですがあんまり鮮明にできませんでした。まあちょっとボケ気味ですが、これも味と思ってくだされば幸いです。
※ トップ画像は市場でトルティーヤを焼く店(オアハカ)
タコスとはどんな食べ物?
タコスはメキシコやガテマラなどの中米の国、旧マヤ文明圏と言っていいかな、で食べ続けられてきた伝統食です。トルティーヤと呼ばれるトウモロコシで作られた薄焼きパンで具を包んだものをタコ(taco)と言います。スペイン語も複数形はSをつけるので tacos(タコス)となり、これに各種サルサ(ソース)や薬味・付け合わせを添えていただくのです。
トルティーヤはかなりトウモロコシの香りが強く、なれないと抵抗を感じますが、具を入れサルサをかけてかぶりつくと美味しくなるので心配無用。もう気分はメキシカン。
ちなみにメキシコ人はパンやライスも食べますが、主食はあくまでトルティーヤ。
どんなタコスがあるの?
トルティーヤに挟める具なら何でもありですが、人気のある具は
・カルニタス…豚肉の蒸し煮料理、長時間煮込んでホロホロのを裂いて使う
・アルパストール…豚肉をドネル・ケバブのように回転焼き、レバノン移民の影響
・コチニータ…ユカタン半島の豚肉料理、蒸し焼きにするがコクがあって美味しい
・カルネ・アサーダ…直訳するとカルネは肉、アサーダは焼く、牛肉の場合が多い
・チョリソ…ソーセージのこと ・ポヨ…鶏肉の細切れ 。ケソ…チーズのこと
・セビーチェ…魚介の酢漬け、海岸部では人気 ・内臓系もあります
店や地域によって様々な具材があり、食べくらべるのも一興。
サルサが味の決め手
タコスにはサルサ(ソース)をかけていただきます。これも種類がありますが、一番使ったのがサルサ・メヒカーナ(メキシコ・ソース)。これはトマト(赤)玉ねぎ(白)青トウガラシ(緑)を主材料とするソースで、その色合いがメキシコ国旗を表すためこの名称。おそろしく辛いのですが、暑くて食欲の減退する夏場のメキシコにはぴったりのソースでした。
他に人気があるのはトマテージョ(緑ホウズキ、トマトではありません)を使ったさわやかな風味のサルサ・ヴェルデ(緑ソース)。
イタリア料理にも同じ名前のソースがありますが、それはイタリアン・パセリが主材料で違う物です。
赤いソースはトマトを主材料にしたサルサ・ロハで日本人むきかな。
ディップとして人気のアボカドをペーストにしたワカモーレもサルサに使えます。
屋台だとあまり種類がありませんが、タコス専門店は豊富に用意されていました。
※ メキシコはトウガラシの原産地で日本のそれより辛いです。すべての料理が辛いわけではありませんが、トウガラシが使われる物は本気で辛いので、苦手な人はうかつに食べてはいけません。辛いトウガラシで有名なハバネロもスーパーで普通に売られていたり、焼いて料理の付け合わせにでてきます。辛さに強いと自負していたトラタロウですが、焼きハバネロは半分でギブアップしました。あれは辛いのではなく、痛いのです。
薬味と付け合わせも大事
タコスを食べる時、好みによって刻み玉ねぎ、ライム、野菜類を薬味として加えると美味しいし、味に変化を与えます。別注文の付け合わせとして焼いたセボヤ(甘玉ねぎ)、フリホレス(豆のペースト、これだけでも具になる)、ノパル(焼いた食用サボテン、ネバネバしてます)も美味。
特にオススメは焼いたセボヤ。日本の玉ねぎは辛いですが、メキシコのそれは欧州伝来の甘玉ねぎで、あまり辛くありません。昔の欧州ではパンと玉ねぎで最低限の食事とされていましたが、スペインの慣用句に「あなたとならばパンと玉ねぎ」(手鍋さげても、と同じ意味)というのがあります。いい言葉ですね。
焼いた甘玉ねぎは甘味が増加して、タコスの付け合わせにぴったり。
人気のある薬味のひとつがシラントロ(cilantro)。サルサ・メヒカーナにはたいがい入っているし、他の料理にもつかわれます。英語でコリアンダー、中国では香菜(シャンツァイ)と呼ばれますが、近年はタイ語のパクチーが有名。これが好きな人はパクチストと呼ばれます。
ドクダミを薄くしたような、カメムシのような香りで、好悪が分かれますが、苦手だとタコスもつらいかな。まあ、入ってない料理の方が多いので選んでください。
タコスはどこで食べられるの?
タコスを出す店をタケリア(taquerria)と言いますが、スタンド、屋台、小店と様々なタケリアがあり、中にはレストランに近いような専門店もあります。タケリアを開くのは実に簡単。トルティーヤは専門の店から買えるので、具と薬味を用意すれば営業可能。長距離バスの休憩所などでは、長机ひとつのタケリアもあり。
レストランで料理を注文しても、トルティーヤがついてきて、自分でタコスを作ることになるので、すべての店は潜在的タケリアであると言えるかも。
屋台でよく見かけるのが中央部が盛り上がった円形大鍋(コマル)。周辺部で具の肉類やセボヤを煮て、盛り上がった中央部で刻んでいた。注文が入るとトルティーヤをちょっと煮汁に浸してから中央部に置いて温めます。
そう、トルティーヤを温めるのはとても大事。どんなタケリアでもこれは欠かせません。と言うのが冷めたトルティーヤはすごく不味いのです。もともと無発酵であまりふっくらしてないトルティーヤは、冷めると固くなってボソボソ。ガテマラには「冷めたトルティーヤを食べさせる」という表現があるが、これは虐待を意味するとか。
自家製・焼きたてホカホカのトルティーヤを売り物にする店を除き、店におかれたトルティーヤは冷めているので、温めて提供されます。レストランだと保温用の布に包んで出してくれます。
たまに冷めたトルティーヤを出されることもありますが、ハズレだと思いましょう。
似て異なるのがアメリカのタコス
日本ではメキシコ料理店は珍しい存在なので、タコスは知っていても食べる機会は少ないですね。アメリカではタコベル、チポトレ、キュードバなどのタコス屋チェーン店があり、どこでも気軽に食べられます。
特にタコベルは世界に6000店舗、アメリカの外食企業でも売り上げ上位に位置し、あちらこちらにあります。アメリカに行った時、タコスの味を懐かしんでタコベルに行きました。だが…
アメリカでタコスというと、トルティーヤを揚げてUの字に曲げ、その間に具をはさんだハードシェルタコスを意味するようだ。メキシコには無い食べ物で、「これじゃない」感が半端ない。
トルティーヤで具を包むブリトーも何か違うと思ったら、タコスがトウモロコシではなくて、小麦粉で作ったフラワートルティーヤ(flour=小麦粉)で何か違う。タコスを揚げてチーズやソースをかけていただくナチョスにいたってはアメリカ生まれの料理。
アメリカのタコス類は消費の主流だった欧州白人系アメリカ人向けに開発・販売されてきた歴史があるので、メキシコの味を期待する方が無理らしい。
ただ近年アメリカでは中米・南米から来たラテン系移民であるヒスパニック(不法移民も多いらしい、トランプ大統領がメキシコとの国境線に壁を作らせた所以)が増加中。約5000万人、人口の15%強もいると、本場のタコスを求める声も強く、アメリカのタコスも変化していくかも。
首都圏・大阪にはタコベルが何軒かあるようです。その昔に進出した時はほどなく撤退したらしいが、今回は日本に根付くかな?
※ タコベル・ジャパンのHP に移動します
日本でおうちでタコス三昧
首都圏・大阪圏はいざしらず、日本のほとんどの土地にはメキシコ料理店もタコベルもありません。
でも気軽にタコスもどきは作れます。地方都市でも大き目のスーパーなら「オールドエルパソ」のタコスシーズニングを売っていますが、これがけっこうタコスらしい味で気に入ってます。
※ オールドエルパソの公式HP に移動します
コーントルティーヤは近くの輸入食品店で売っていましたが、やはり日本人の味覚には合わないのか見なくなりました。でもフラワートルティーヤやそれに近い製品は、スーパーでも冷凍品や長期保存パックで売っています。正直日本人にはこちらの方が美味しい。
フラワートルティーヤは大きいので、適当なおおきさにちぎり、具と薬味を入れてかじりつけば美味しい!。これはメキシコのタコスと同じか?と問われれば、違うとしか言えませんが、これも立派なタコスです。
ご飯と組み合わせれば、沖縄名物のタコライスも楽しめます。
でも、メキシコのタコスもまた食べたいですね。欲張りだな。