現地食探求はバックパッカーのたしなみ。世界のB級グルメを紹介します。今日のお題はスリランカのローカル食堂。2024年7月、24年ぶりにスリランカに行きまして現地食を堪能しました。なるべく訪れた土地を体感するべく食事はほとんど各地のローカル食堂。地元民が食べているスリランカ料理を紹介します。
ローカル食堂はスリランカでは HOTEL と呼ばれますが大衆食堂といった感じ。インドなどにもHOTEL=大衆食堂という所がありますが、宿屋と食堂を兼業していたイギリスの INN みたいな感覚かな?
スリランカの食事の特徴は?
① 主食 + おかず
かつての日本もそうでしたが、大量の主食を少ないおかずで食べるというパターンです。
主食は米飯が中心ですが、米の加工主食や小麦粉製品も沢山あります。
② おかずの中心はカレー
煮物系のおかずはスパイスを使う物が多く、まとめてカレーと呼ばれちゃいます。
本当は細かい分類(唐辛子を使うキリサタ、あっさりしたキラタなど)がありますが、英語メニューだとみんな CURRY ですね。これに和え物、炒め物などを組み合わせると基本定食になりRICE & CURRY と称されます。
➂ 南インドの影響が強い
スリランカの主要民族は仏教徒の多いシンハラ人(74%)ですが、南インドから来たタミル人(18%)も多く主食のバラエティーはほぼ南インドと同じ。イスラム教徒のムーア人(9%)もいてビリヤーニなどのムスリム料理もあります。
飲み物は紅茶が中心というのも同じですし、スナック類もインドのそれと共通。
④ 手食が基本
東南アジアから南アジアは米食文化であると共に手食(手で食べる)文化の地域。RICE & CURRYも手で混ぜながら食べています。
こういう地域は熱々の食品は基本出しませんが、高地を除いて暑いのでOK。
外国人にはスプーンやフォークを出してくれますが、手で食べるのも慣れれば簡単。
⑤ 魚もよく食べます
島国で海に囲まれていますので魚介類もよく食べます。紅茶産地の高地ヌワラエリアにも魚屋があって繁盛していました。
またモルジブフィッシュ(Maldive fish)と呼ばれるカツオを干した物が隠し味などに使われ、味覚のベースが日本人に近いかも。
物によってはかなり辛い食品もありますが、全般的にアッサリした味付けで日本人向けです。
各種主食の紹介です
スリランカのローカル食堂での注文は主食を選ぶことから始まります。店によって全部の主食があるとは限りませんが、少なくとも2~3種類はありました。
① 米飯(Cooked rice)
とにかく主食の王者は米。2000種以上の伝統品種があり、300種ぐらいは流通していると言われています。
1人1日あたりの米消費量は295gで世界9位(ちなみに1位はバングラデシュ)。日本は50位で119gですので、日本人の2.5倍くらい米を食べています。ただ後述するように米加工主食も多いので全部ご飯での消費ではありません。
ローカル食堂の食事でご飯を頼んで意外に思ったのが短粒種であること。日本の米に似た短くて丸い形。でも全然違うのが甘味がなくて、味も香りも薄いこと。
スーパーで価格を見ると、この短粒種は1キロあたり円換算¥100ほど。香りも味も良い高級米であるバスマティライスは¥300と3倍でした。やはり大衆食堂だと味よりも低価格を追求せざるを得ないのかな。
ローカル食堂の中には赤米を提供する所もあります。ラトキャクルと呼ばれる赤みがかった米で、普通の物より栄養価も高いとか。
スリランカでは主に南部で栽培されていますが、でんぷん質が少ないのでパラパラに炊けるのは短粒種と同じで、カレーに合います。
日本でも通販で入手できるようです。
ローカル食堂ではなかなかお目にかかれないご飯がキリバス(Kiribath)またはキリバトゥと呼ばれるココナッツミルクを入れて炊いたご飯。スリランカではお正月やおめでたい時に食べるご飯で、ココナッツの油脂でコクが増加。辛いおかずに合います。
ココナッツを入れて炊くご飯はマレーシアではナシレマと呼ばれる国民食
世界のB級グルメ/18 ナシレマ(ナシルマ) in マレーシア に移動します
ゲストハウスに宿泊した時にお願いすると炊いてくれたりします。米とココナッツを常備していないスリランカの家庭なんてありませんので難しい注文ではありません。
② イディアッパム (Idiyappam)
英語名がストリングホッパー( String Hopper)。米製の麺ですが押出し麺の一種。
米粉に雑穀粉または小麦粉を入れ塩・水を加えて練り、専用の押出し機に入れて圧力をかけると小さい穴から糸状に出てきます。これを小さいセイロのような容器で受けて蒸すと完成。
用具は日本でも通販で売っていた、すごいな。 vol.5 インディアーッパの作り方
作り方の動画も載っています
これにカレーをかけていただきますが、麺はゆるやかな塊になっていてほぐれません。分類上は麺類になるのでしょうが、麺を食べている食感はゼロですね。でもクセが無くてアッサリと食べられるので食欲が無い時にもいけます。
注文の時は塊単位で数を指定しますが、日本語だと一個なの一枚なの?
南インドと共通する食品ですが、南インド人の多いクアラルンプールでインスタント粉を見つけました。するとアッパムの写真もついているので原料はほぼ共通なのかな? 違いはアッパムにはココナッツミルクが入ることと微発酵させること。
➂ アッパム(Appam)
半円形のクレープみたいな形状で Hopper とも呼ばれます。米粉にココナッツミルクを入れた物を微発酵させたのが生地。
小さな中華鍋のような焼き器に生地をいれたら、鍋全体に生地を広げて火にかけフタをします。余分な生地が下に集まるので焼き上がりは下がモチモチ、周りがカリカリと二つの食感が楽しめる。
一応発酵生地ですがドーサほど発酵させないのか酸味は感じられません。
食事時になると店の前でアッパム職人が焼きだめを始めます。広げた生地の底に卵を落とすとビッタラ・アッパム(エッグ・アッパム)となってちょっと贅沢。
④ ピットゥ (Pittu)
砕け米にココナッツミルクを混ぜて、筒形の容器で蒸した物。ココナッツミルクを入れても少量で、キリバスほど油脂分は感じられず食感もパラパラ。水を良く吸う感じで、水分の多いスリランカ・カレーに合います。
⑤ ロティ類 (Roti)
ロティは小麦粉で作るパン類の総称。インドには様々な種類があり、一部はスリランカにも伝わって、アレンジされていた。ただ小麦粉はスリランカで自給できず貿易収支悪化の一因ともなっているとか。
この章では小麦粉製品ではありませんが、南インド由来のパンに類似した主食も紹介してしまいます。
A、パラータ(Paratha)
小麦粉に水・塩を加えた水分量多めの生地を手で薄く伸ばして鉄板で焼きます。
インドのパラータは軽く層を作って食感を軽くし、ちょっと高級感があります。ところがスリランカのそれはあまり層がなく、厚くて食感が思い。食べ応えはあるけど好き嫌いが分かれるかも。
この生地にカレーを包んで焼き上げた物はポピュラーなスナック。
※ 水分少な目の生地を麺棒で伸ばして焼くチャパティやナンは見ませんでした。これらのロティは北インド中心で、スリランカが影響を受けたのは南インドだからでしょう。
B、ポルロティ (Polroti)
ポルはシンハラ語でココナッツ。生地にココナッツミルクを入れたロティはちょっとフワフワした感じになって美味しい。パンケーキみたいな感じもします。
C、ゴダンバ・ロティ( Godhamba Roti )
インドのチャパティに近い薄焼きパンだが、ココナッツを入れるのと生地の薄さが違う感じ。
そのまま主食として食べられるが、具を包んで焼いたり揚げたりしたスナックや細かく刻んで炒めるコットゥに加工することが多い。
D、ドーサ (Dosa)
米粉とウラド豆のペーストを一晩寝かせて発酵させた生地を鉄板に流して焼きます。インドだと薄く大きく焼き上げ、くるっと丸くしてインパクト極大に仕上げることもある。スリランカでは普通に丸く焼いた物しか見ませんでしたが、発酵で独特の酸味がある味は同じでした。
E、イドリ (Idly)
米粉とウラド豆の発酵生地を型に入れて蒸した白い蒸しパン。発酵させてあるため少し酸味があるのとボソボソした食感で好き嫌いが分れるかも。
タミル人(南インド系)が多い北部の街ジャフナで食べたが、他の地域では見なかったのでタミル人居住地域限定なのかもしれません。
F、イギリス食パン (British bread)
型に入れて四角く焼き上げたのがイギリス食パン。大英帝国の植民地だったスリランカにも伝わっており、でかいトーストになってローカル食堂に並んでいた。
主食は南インドとかなり共通しています。
インドの主食に関してははこちらもご覧ください
世界のB級グルメ/15 朝食 in インド に移動します
次はおかずのチョイスです
主食を選んだら次はおかずを選びます。 RICE & CURRY を定食のように売っている店なら自動的に基本的なおかずをのせてくれますが、自分で選ぶならケースに並んでいる物を指さしでOK。
ご飯だと上にかけてくれるのが普通です。基本おかずセットに他のおかずを追加するのもあり。複数人で頼む場合は小皿に盛ってもらいシェアすることもできます。
① カレー(煮物)類
カレーはインドの言葉ではありません。南インドで「おかず」などを意味する Kari が語源だとか諸説あります。やがてイギリスで広まり CURRY としてインドに逆輸入されたのです。
スリランカでもスパイスを使った煮物は○○カレーと英語メニューでは表現されています。
スリランカ・カレーの特徴を挙げてみました。
①とろみは無い…とろみは欧州でシチューなどの技法から導入されました。日本のカレーはイギリス経由で入ったのでとろみがあります。
スリランカはスープカレーみたいな感じ。パラパラのご飯に合うように作られているのです。
②粉末スパイスを使用…インドはホールスパイスを多用しますがスリランカはパウダー中心。
➂ココナッツミルクを入れる…油はあまり使わずココナッツミルクであっさり目に作る。
④具材は単品で使用…インドもそうですがチキンカレーならチキンのみ、ダル(豆)カレーならダルしか入っていません。
トラタロウが食べた代表的なカレーはこんなのです
② あえ物・炒め物類
カレー系以外に重要なおかずがあえ物など。特にココナッツフレークを玉ねぎや調味料とあえたポルサンボルはどこのローカル食堂にもあります(売り切れる時もあるが)。カツオ干しを混ぜた物はうま味もあって、これだけでご飯が進む逸品。
青物をあえたマッルンもさわやかで食欲を刺激します。
➂ その他
カレー類やあえ物・炒め物以外のおかずは少ないです。なかなか人気があって美味しいのがデビルチキン。揚げた鶏肉と野菜を甘酢あんかけ風に処理しています。
家庭料理やレストランも体験したい
3週間のスリランカ旅行中はローカル食堂にしか行かないつもりでしたが、10日ほどで飽きてきます。なぜならば
① ローカル食堂のメニューはどこの土地に行っても基本同じ。
② 庶民向けの価格であるが、味もそこそこ。
➂ 野菜系のおかずは煮込みすぎか新鮮さがいまひとつ。
そこで目先を変えるべくツーリスト御用達という感じのレストランに行ってみました。
スリランカでは大衆食堂はHOTELだけど、ちょっと良い店は RESTAURANT です。
ヴェジカレーセットなのでそんなに高くはないが、野菜が新鮮、カレーもアッサリしていて食べやすい。ご飯も甘味があるバスマティライスで美味かった。
ゲストハウスも場所によっては夕食・朝食を用意してくれます。当たりはずれは当然ありますが、素朴な家庭の味で美味しかった。
ローカル食堂だけでなく色々な所で食べてみるのも大事だと思いました。
スリランカのローカル食堂を堪能したのですが、気になることがひとつ。姉妹ブログ『KLダイアリートラタロウ』にも書いたので、そこをコピペします。ちなみにトラタロウは現在物価の安いマレーシアに住んでいます。
スリランカを3週間旅し現地食のみ食べ続けましたが、最大の感想は「思ったより高い!」です。もちろん日本と比べると安いのですが、物価が日本の半分くらいのマレーシアと比べると高く感じます。
まったく違う食品だと比較しにくいので、両国のチキン定食で比べてみます。マレーシアの方がチキンが大きいのに価格は両方とも邦貨換算¥400くらい。いろいろな食物で「あれっ?これだけ出せばマレーシアではもっと良い(多い)よね」という状況多々ありました。特に肉・魚などの動物性たんぱく質食品でスリランカ物は割高感があります。
スーパーで価格を調べて驚愕! チキンはマレーシアで100g¥50くらいで買えるのにスリランカは¥100くらいしてました。魚は種類によって価格差が大きいので調べにくいのですが、マレーシアと同じか高いのです。ちなみにガソリンは1リッター¥180でした。
※ マレーシアは産油国であり価格を低く設定しているので¥70くらいかな。
おそらくこれが2022年の債務不履行(デフォルト)の影響なのでしょう。諸物価、特にガソリン、食料品がものすごく高騰したそうです。
※ この文章はスリランカとマレーシアのあれこれを比較したものです、全文はこちら
スリランカに行ったのでマレーシアと比べてみた に移動します
トラタロウはスリランカ訪問は2回目。最初は2000年(平成12年)でしたが、その時は「えらく辛い食べ物があるな」という感想。今回はそんなに辛くはかんじませんでしたが、スリランカ料理は辛くなくなった?
そういう訳ではありません。トラタロウが24年間のあいだにタイ、メキシコ、南インドなど辛味がスタンダード国々に沢山行き、辛いのに慣れただけです。全部ではありませんが、かなり辛い食品もあるので、苦手な方は要注意です。調子にのって煮たひよこ豆スナックの辛味を現地スタンダードにしてもらったら完食できませんでした。
※ スリランカB級グルメ第2弾も出しました
世界のB級グルメ/20 単品物・スナック・お菓子 in スリランカ に移動します
コメント