現地食探求はバックパッカーのたしなみ。世界のB級グルメを紹介します。今日のお題はタジン、円錐形の土鍋で作るモロッコの国民食。
モロッコを旅した時は3日に1回はタジンを食べていました。モロッコは都市部を除いて外食のバリエーションが少なく、地方を周るとまともな食事はタジンだけという状況が珍しくありません。またサハラ砂漠ツァーに参加するとかなりの確率で夕食はタジン。でも飽きないだけの美味しさとバリエーションがあります。
※ トップ画像は街角のタジンレストラン
タジン(Tajine)とはどんな料理なの?
タジンは鍋料理ですが、「タジン鍋」という独特の土鍋を使うのが特徴。
本体とフタがセットになっており、本体はフチが高い皿状、フタは円錐形をした独特の形状です。使用法は皿に食材・調味料を入れてフタをして火にかけるだけ。
この形状の鍋で加熱すると食材の水蒸気が、比較的低温の円錐形上部で冷やされて水滴となって戻り、食材からの水分だけで蒸せる無水調理が可能になるのです。
ゆでるのに比べ水の使用量は最小限ですむため、水が貴重な砂漠地帯や隊商での調理に適しているという歴史的経緯がありました。
さらにフタが重いため皿とのすき間も水分で密閉状態になります。このためうま味や香りが逃げず、ホクホクに蒸し上がるという効果もあるのです。
かなり密閉状態になりますが、圧力鍋ではありません。圧力鍋は密閉状態を高くして高圧にすることで100℃を越える調理温度が可能になり、調理時間を短縮できます。
タジン鍋はフタは重いですが圧力鍋のような密閉はできません。逆に火力は弱めにしてじっくり蒸し上げるための鍋なので、調理時間短縮は目的ではありません。
しかしメリットが多いため日本でもちょっとブームになり、各種タジン鍋が入手可能になりました。
※ 【2023年】タジン鍋のおすすめ人気ランキング44選 に移動します。
このバリエーションの多さにはモロッコ人もびっくりでしょう。
タジンの作り方
基本は主材料(肉や魚など)+ 副材料(野菜など) + 調味料 を皿にいれてフタをしたら火にかけるだけ。肉類はあらかじめマリネして下味をつけておくなどなど細かいコツはありますが、とても簡単です。
味付けは塩の他にスパイス類(ニンニク、ショウガ、ターメリック、コリアンダー等)、トマト、油など。塩漬けオリーブを具・味付け兼用で使ったり、アイシャ(Aicha)と呼ばれる塩漬けレモンを使ったりするのが特徴的です。
スパイス・ハーブはあまり沢山は使わずマイルドな味わい。ジャガイモが多いタジンはまるで肉ジャガの雰囲気。
モロッコといえばサハラ砂漠があるため砂漠の国というイメージがあります。間違いという訳ではありませんが、それはアトラス山脈の南の話。
アトラス山脈の北、大西洋・地中海に面した部分は地中海性気候でイタリアやギリシャとにた気候。どおりでトマトやオリーブが豊富なはず。
タジンのバリエーション
タジンは主材料 + 調味料の組み合わせでバリエーションは無限。スペインのパエリアみたいに「100の家庭があれば100のタジンがある」ことでしょう。でも旅行者が食べる機会があるタジンは限定されますね。よく見かけるタジンを紹介します。
① 野菜のタジン
モロッコの市場には冬場でも立派な野菜が並んでます。冬場のモロッコのアトラス山脈の北、そして南でも朝晩はかなり寒いのでアツアツの野菜タジンは美味。
特にオリーブ入りは、その酸味や塩味が蒸されることでマイルドになって苦手な人でも食べやすいのです。
② チキンレモン・タジン
チキンと塩レモンが定番の組み合わせ。淡泊なチキンのアクセントになります。
➂ 羊肉 or 牛肉 のタジン
イスラム教圏なので豚肉はありません。羊肉・牛肉はマリネして下味をつけ、最初に蒸して火を通し、野菜をかぶせて仕上げ蒸しをします。
④ ケフタ・タジン
肉団子コフタのモロッコ訛りがケフタ。卵と相性が良く割り入れて蒸します。挽き肉バージョンもあり。
⑤ 魚のタジン
モロッコの沿岸部は漁業もさかん。当然のように魚のタジンもあります。市場にはエビやロブスターも水揚げされており、これをタジンにしたらさぞや美味でしょう。
※ モロッコ大西洋岸はタコ漁が盛ん。ほとんど日本に輸出されるそうです。最近は不漁が伝えられますが。
⑥ 豆と卵のタジン
一回しか食べる機会がなかったが、デンプン質の豆と卵の相性が良かった。
田舎の食堂で食べたがお値段も格安! 逆に観光地では高い価格を請求しにくいのでメニューに載せづらいか。
タジンのお供はホブス
ジャガイモが入ったタジンは主食 + おかず、みたいなものでそれだけで十分な場合もありますが、普通はモロッコのパンであるホブスと一緒に食べます。
丸いモチッとしたホブスはモロッコを代表するパンですが、他にもいろいろなパンがあるので食べ比べるのも一興ですね。
※ モロッコのパンについてはこちらのブログに詳しいです
ホブズだけではない!?モロッコの8種類のパンを一挙ご紹介! に移動します
砂漠ツァーのタジン
マグレブ(モロッコ、アルジェリア、チュニジアの総称、「日没の地」の意)に行ったら欠かせないのがサハラ砂漠観光。典型的なツァーはラクダに乗って砂漠に入り、テントで宿泊するもの。最低1泊2日からあります。
砂漠ツァーの夕食で出る確率の高いのがやはりタジン。モロッコらしい料理であると共に、水が貴重な砂漠に適した料理ですので納得ですね。
野菜とオリーブだけの無骨なタジンですが、砂漠の中で食べるのが最高のスパイス。
タジン鍋のある風景
同じマグレブの国なのにチュニジアに行くとタジンは全然別の料理になります。具沢山の厚い玉子焼きみたいなのがチュニジアのタジン。
そしてタジン鍋もほとんど見ませんでした。アルジェリアを間にはさむとはいえ、影響が無さすぎるのが不思議です。
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