現地食探求はバックパッカーのたしなみ。世界のB級グルメを紹介します。今日のお題はタイのお菓子の続き。前回は焼き菓子、揚げ菓子、蒸し菓子を紹介しましたが、他のもいろいろなお菓子がありますので追加します。
ポルトガル伝来の伝統菓子
17世紀アユタヤ朝支配のタイにターオ・トーンキープマーという女性がおりました。彼女は日本やポルトガルの血をひくインターナショナルな人で、ポルトガル菓子の技法をタイに導入し、そのレシピは現在も縁起の良い伝統菓子として人気があります。
① フォーイトーン ฝอยทอง 鶏卵素麵
日本にもポルトガル菓子フィオス・デ・オヴォス(卵の糸)が平戸に伝わり、鶏卵素麵として現在も福岡や大阪などで作る老舗があるとか。タイにもほぼ同じ物が伝わりました。
煮立たせた砂糖液(飽和水溶液)に卵黄(タイではアヒルの卵がベター)を糸状に流し込み、固めたそれをシロップに浸した物。かなり甘いです。


そのまま食べる他に焼き菓子カノムブアン、ココナッツミルクプリンのカノムモーンケンなどの具にも使われています。
② トーンイップ ทองหยิบ 卵黄で作る花びら
トーンは「黄金」、イップは「拾い上げる」。 煮立たせた砂糖液に卵黄・米粉で作った生地を円盤状になるように入れて形成します。加熱されて形が整ったら「拾い上げて」円形の器に入れ、花びらのような形に形成して完成。
フォーイトーンより生地が厚いので、噛むと中からシロップがにじみ出る感じ。

➂ トーンヨート ทองหยอด 丸い黄金の塊
トーンイップより少し固めの生地を煮立たせた砂糖液にボール状になるように絞り入れます。生地が固いせいかトーンイップよりシロップは吸わない感じ。まあシロップ多いと甘すぎるので個人的にはこれくらいが良いかな。
ヨートは「少しづつそそぐ」の意。

④ トーンエーク ทองเอก 花びらに金箔の縁起物
トーン(黄金)シリーズはおめでたいお菓子ですが、これはめでたさひとしお。エークは「最高」の意。
卵白で作った白い台座に卵黄生地の花が鎮座し、上に金箔があしらわれます。
原料は卵黄、ココナッツミルク、小麦粉、砂糖で1時間ほど煮詰めて形成。

⑤ メットカヌン ขนมเม็ดขนุน 緑豆あんの黄金包み
メットは「種子」、カヌンは「ジャックフルーツ」を意味。緑豆あんを細長く形成し卵黄をつけて砂糖液で煮た物。トーン・シリーズはかなり甘いが、これは緑豆あんが主体なので穏やかな甘さ。
ジャックフルーツは1mにもなる世界最大の果実だが、果肉の中にある種子も加熱すると食べられます。



黄金はタイでは大変尊ばれる色で、トーン・シリーズは縁起の良いお菓子として結婚式や仏教行事での必需品。9が縁起の良い数字なので計九つの縁起菓子があります。
細長いフォーイトーンは「長寿」、トーンイップは「富みを得る」、メットカヌンは「援助される」など良い意味を表わします。



茹でて作る菓子
蒸して作る菓子は沢山ありますが、茹でて作る物は意外に少ない感じ。
① カノムトム ขนมต้ม ココナッツづくしのお団子
カノムは「お菓子」、トムは「煮る」を意味します。 もち米粉とココナッツミルクで作った生地にココナッツとヤシ砂糖で作ったあん(タイではグラチーと呼ぶが、東南アジア諸国の多くで使われる)を包み茹でます。仕上げに削ったココナッツをまぶすというココナッツづくしのお団子でした。
緑は甘い香りのバイトゥーイ(パンダン)を使います。

マレーシアにもまったく同じお菓子がオンデ・オンデという名であります。ただインドネシアだとオンデ・オンデは胡麻団子みたいなお菓子になるのが不思議。
※ココナッツを削った物の名称が分かりにくい
細長い物がココナッツロング、荒い粉状の物がココナッツフレーク(ファイン)で良いのかな?

② ブアローイ บัวลอย 色とりどりの白玉団子
もち米の団子、すなわち白玉団子をとろみのあるココナッツミルクのスープでいただきます。
日本の白玉団子より小さく紫イモ、ニンジン、カボチャなどで着色されているので華やかな色合い。暖かいスープで食べるのは中国風なのかな? 冷たいと白玉が固くなるから?



➂ ブアローイ・ナムキン บัวลอยน้ำขิง ショウガ風味の黒胡麻団子
中国デザート湯圓(タンユエン)のタイ版。
黒胡麻あんが入った白玉団子が甘いスープに浮いているが、スープがショウガ風味。
ナムは「水」、キンは「ショウガ」でショウガスープということだが、これも温かいデザート。

氷菓子
暑い国ですので氷を使った冷たいお菓子も人気。ちなみにタイが一番暑いのは4月前後です。一番涼しいのは1月前後ですが、今回(2025年)は特に寒くなり東北部では朝は寒さにふるえました。
① ナムケンサイ น้ำแข็งไส かき氷?…とはちょっと違う
フードコートなどでずらりと並んだトッピングに圧倒されるのがこれ。ナムケンが「氷」でサイが「削る」なのでかき氷と紹介されたりするが、ちょっと違うかな。
かき氷は「氷をシロップやトッピングで食べるもの」だが、ナムケンサイは「シロップやトッピングに氷を入れ冷やして食べるもの」。
氷はシロップ・トッピングを盛った後、上にかけます。



② ナムカティ น้ำกะทิ 様々な具をココナッツミルクでいただく
ナムは「水」、カティは「ココナッツミルク」。様々な具を甘いココナッツミルクと共にいただきます。ベトナムのチェーとほぼ同じですが、チェーはその場で食べることもできるのにナムカティはほぼ持ち帰り専用。市場・夜市でビニール袋に入れて売られます。


入れる具を頭において〇〇ナムカティと呼ばれます。典型的な物が米粉とバイトゥーイ(パンダン)で作られた短い麺ロートチョン (น้ำกะทิ)を使ったロートチョンナムガティ (ลอดช่องน้ำกะทิ)。ちなみにこれはマレーシアにもあってチェンドルと呼ばれます。

他のよく見る具が
・タプティムクロープ(クワイの煮物)
・チャオクワイ(仙草ゼリー)
・トゥアデーン(金時豆)
・トゥアダム(黒豆)
・トゥアキアオ(皮むき緑豆)
・ルークチット(サトウヤシの実)
・ルークターン(オウギヤシの実)
・サーク(サゴヤシのでんぷんボール)
などです。


➂ アイティームカティ ไอศครีมกะทิ ココナッツミルクのアイス
アイティムは「アイスクリーム」、カティは「ココナッツミルク」です。バニラやストロベリーもありますが、せっかくタイに来たのですからこれがオススメ。
単品に各種トッピングをつけたり、パンにはさんだりもできます。



④ アイティームロート ไอติมหลอด 昔のアイスキャンデー
氷に塩を加えると非常に冷たくなる、という現象は昔から知られており、この原理を利用して冷蔵庫ができる以前からアイスクリームが作られていました。
同じ原理で作られたアイスキャンディーがアイティームロート。金属の細長い筒にジュースを入れ、串を刺して冷却機にセット。冷却機には氷と塩が入っており、振ることで冷却がさらに進み冷蔵庫なしでアイスキャンディーができてしまいます。すごい!



味はジュースを凍らせたそのまんま。イベントや観光地の客寄せみたいな感じ。
⑤ かき氷
ナムケンサイではない普通のかき氷もありました。これもトッピングの多さが売りみたい。
バンコクだと日本風のかき氷、韓国のパッピンス、台湾の雪花冰など各国のかき氷が楽しめます。



フルーツのお菓子
フルーツ王国タイですが、そのまま食べるだけでなく、ひと工夫してお菓子的に食べることもあります。
① カオニャオ・マムアン ข้าวเหนียวมะม่วง マンゴーともち米
変な取り合わせのようですが、もち米にはココナッツミルクと砂糖が加えられているのがポイント。甘く濃厚なもち米とマンゴーの酸味がマッチするのです。


② マムアンデップ มะม่วงดิบ 青マンゴーのスパイスかけ
熟したマンゴーは甘酸っぱくて美味しいのですが、マンゴー生産国では未熟な青マンゴーも売られています。甘味はほとんどなく軽い酸味があり、食感はポリポリ、サクサク。これがクセになる美味しさで、タイではプリック・ガ・グルアという塩・砂糖・トウガラシの混合品をつけてフルーツというよりお菓子・スナック感覚で食べられます。


➂ ソムオー ส้มโอ きれいに剥かれた大粒みかん
英語でポメロ(Pomelo)と呼ばれる大型柑橘類で、日本では文旦(ぶんたん)やザボンという仲間があります。フルーツなのですがタイでは皮・薄皮・筋をきれいに剥いてパックされた物が売られている。これは食べやすくて美味しくて、トラタロウ的にはお菓子に分類したいのです。


その他のお菓子
① ルークチュップ ลูกชุบ 色鮮やかなミュニチュア菓子
緑豆あんを果物や野菜の形にして着色し、寒天でコーティングした物。色鮮やかなミュニチュア果物・野菜の姿がカワイイし、味も白あんみたいで美味しい。
ポルトガルのマジパン細工が起源と言われています。


② カノムピア ขนมเปี๊ยะ 中華パイ菓子
小麦粉生地にラードを塗って折り込んだ中華パイの総称。形や色はバリエーション豊富。
基本は緑豆あんが入ったものだが、塩漬けアヒル卵などいかにも中華な味の物もあります。
バンコクの中華街ヤワラーには多くの店がありますが、高い物は慣れない中華味で日本人が美味しく感じるとは限りません。シンプルな緑豆あんが無難かも。

➂ カオクリアップワーオ ข้าวเกรียบว่าว 巨大煎餅
カオクリアップは「煎餅」、ワーオは「凧」で凧のように大きな煎餅。
やわらかい餅に砂糖・油を加えて伸ばした生地を乾燥させて作ります。竹の熊手みたいな道具で生地をはさんで焼けば煎餅の出来上がり。

④ カノムパガーグローン ขนมผกากรอง タイの煉り切り
緑豆などのあんを小麦粉・砂糖・ココナッツミルクを練った生地に包み、ピンセットで花弁を作ったお菓子。パガーグローンは中南米原産のランタナ(和名は七変化)という花。小さな花が集まった様子を表現しています。
味も雰囲気も煉り切りみたいなので、伝統菓子かと思ったら割と最近の創作みたい。

⑤ カノムイープン ขนมญี่ปุ่น 日本のお菓子
親日国で日本食レストランは沢山ありますし、現地化した日本食もあります。
お菓子も和菓子、パン、スナック、チョコレートなど日本の物をよく見かけますね。
近年の大ヒットが日本から輸入した糖度の高いサツマイモを使った「焼き芋」。日本のサツマイモはマンワーンイープン (มันหวานญี่ปุ่น)…「日本の甘いイモ」と呼ばれ高いのに人気です。

キロ¥1600もします




タイには7万人の日本人が住み(世界で5位)、バンコクには5万人(世界で2位)が住んでいるそうですが、日本のお菓子はタイ人向けの戦略になっていますね。
番外編 昆虫食
昆虫を食べる地域としては中国・東南アジア・アフリカ・韓国・メキシコなどが有名。東南アジアではタイがダントツで、特に北部・東北部の夜市では昆虫屋をかなり見ます。
お菓子とは言えませんが、立派なスナックなのでちょっと紹介しておきます。メンダー(タガメ)を除いて安いのでぜひトライしてみて下さい。

※ 昆虫が苦手な方は閲覧注意です!
以下に紹介するのがよく売られている昆虫です。素揚げが多く塩、スパイス、ナンプラーなどで味付けされています。
① タケツトガの幼虫 初心者にはこれがオススメ。揚げた物はサクサクして食感が良い。クセもなく、ほぼ調味料の味しか感じないので抵抗が薄いのです。
② バッタ 大きいので見た目で引いてしまいますが、スナックみたいで美味しい。抵抗があれば大きな後ろ足は取って食べてもかまいません。


➂ カイコのサナギ 韓国のカイコの乾燥サナギを煮たポンデギはエビ風味で美味しかった。生サナギは煮たものより揚げた物が美味しいと思う。
④ コオロギ 土臭いかと思ったが、バッタと同じで普通に美味しい。コオロギは養殖しやすく、今後の昆虫食のエースと目されているそうです。


⑤ サゴワーム でんぷんが採れるサゴヤシの幹に住むゾウムシの幼虫。大きいイモムシだがタンパク質・脂質が多く、味も濃くて昆虫食の中でも上位の存在。 ただ中身がジューシーなぶん抵抗は強いかも。
⑥ タガメ 水生肉食大型昆虫で哺乳類ならライオンかトラみたいな存在。日本では絶滅危惧種だがタイではメンダーと呼び食用昆虫の王様で高級品。生を焼いてすりつぶしスパイスなどと混ぜ、野菜のデップにするとフルーティな味わい。ナンプラー漬けや発酵させた物もあります。


ちなみにバッタ類やサナギはエビみたいな味がする物が多いです。実はご先祖様は同じだとか。4億年前に海から陸に上がった甲殻類が昆虫の始まりみたいです。まあ、甲殻類は見た目も昆虫ぽいですものね。

とにかく見た目よりも美味しいのでチャレンジする価値あり。複数売っているのでミックスで頼めば種類も多く食べられます。
慣れるまでは「なるべく見ないようにして食べる」のがコツです(笑)。
とにかく見た目よりも美味しいのでチャレンジする価値あり。複数売っているのでミックスで頼めば種類も多く食べられます。
上下で代表的なお菓子50種類以上を紹介しましたが、まだ十分ではありません。タイ王国はお菓子王国でもありました。また訪れて補完したいです。
※ 上編はこちら
世界のB級グルメ/24 お菓子 in タイ(上) 焼き・揚げ・蒸し菓子編 に移動します
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