現地食探求はバックパッカーのたしなみ。世界のB級グルメを紹介します。今日のお題はタイのテイクアウト(お持ち帰り)飯。タイは外食文化と言われていますが、大都市バンコクはいざ知らず地方都市に行くと食堂・屋台が意外と少ないのです。こんな数で市民の外食をまかなえるの?と思っていましたが、どうやらテイクアウトして家で食べる形態が多いようです。タイのテイクアウト飯事情を紹介します。
タイの外食文化とテイクアウト飯事情
外食と中食
タイ人は自炊をしない、外食が多いと言われています。その背景として
・年中暑いので冷蔵庫普及以前は作っても長持ちしなかった
・屋台が多くて便利、作るより安くあがる
・女性の就業率が高く(64%、世界平均48%、174ヶ国中32位)専業主婦が少ない
・自宅にキッチンが無い(特にアパート、マンション)場合が多い
・食事時間がはっきりせず、食べたい時に食べる習慣がある
などが挙げられます。
たしかに首都バンコクなどは路上の屋台営業こそ制限されていますが、朝から晩まで食堂、レストラン、フードコートが利用できます。
ただ地方都市を旅すると食事ができる店が意外と少なく、外食需要を満たせるとは思えません。またある調査では毎日外食をする人は15%以下で外食文化と言うには少ない感じです。

ところが地方都市ではテイクアウト(持ち帰り)専門の店が多いことに気づきます。朝に夕にバイクでやってきた現地人が大量におかず・麺類(時にはご飯まで)を買っていくではありませんか。
調理済みの食品を買って帰り、家で食べるのは中食(なかしょく)と呼び、厳密には外食とは区別されます。でもこれを外食に入れれば、タイはかなりの外食文化と言えるでしょう。
※ 原料を買ってきて家庭で調理して食べることを内食(うちしょく)と言います。
中食は「ちゅうじき」と読めば昼食の意味になりますがほぼ死語かな。
テイクアウト飯事情 Q & A
Q 屋台飯とテイクアウト飯は何がちがいますか?
A どちらも屋台(移動可能な簡易店舗)で営業しますが、屋台飯はテーブル・椅子がセットされその場で飲食可能。テイクアウト飯はお持ち帰り専用屋台となり、その場での飲食はできません。
ほぼすべての屋台飯はテイクアウト可能。麺類もOKです。するとすべての店がテイクアウト対応可ですね。

Q テイクアウト飯はどこで買えますか?
A 各地の食品市場(タラート)が朝市を開催。未明から沢山の食べ物屋台が出ますが、だいたいお昼過ぎで終わり。
夕方からは夜市(タラートグラーンクン)が主役。夜市は広場や街頭の一角が仕切られて開催されます。グーグルマップでもチェックできました。
朝市と夜市の中間、昼食時間をローカル食堂・フードコートが埋めている感じです。

※ 夜市は飲食屋台中心の物、テイクアウト屋台中心の物、両者のミックスがあります。
Q テイクアウト屋台ではどんな食物が買えますか?
A 焼き物、揚げ物、蒸し物、汁物、麺類、ごはん物、デザートとありとあらゆる食べ物があります。ただあまり専門的な調理技術がいる物や値段の高い物はありません。あくまで庶民の食卓に並ぶおかずが中心です。
Q 買わない方が良い食品はありますか?
A 焼鳥や焼きソーセージなどは焼きたてを買えればよいのですが、作り置きは冷えてしまい味もだいぶ落ちます。旅行者は宿での再加熱は難しいので買う場合は覚悟してどうぞ。
また物によってはパクチー(コリアンダーの葉、独特の香りから好悪が分かれる)が付きますので、嫌いな方は「マイ(否定)・サイ(入れる)・パクチー」と言いましょう。
不特定多数の客層を対象としているため、極端に辛い食物はありません(多分)。苦手な方は「ペット(辛い」、「プリック(トウガラシ)」などの単語で確認しましょう。
ソムタム(辛いパパイヤサラダ)にはパラ(魚介の発酵調味料)を入れる場合がありますが、プーパラ(カニのパラ)は食中毒の危険があるようです。
昆虫食もあり味も食感も悪くありませんが、バッタ類・芋虫類は見た目がアレなので苦手な方は近寄らない方が良いかも。
Q 飲料やお酒はありますか。
A ジュース屋ぐらいはありますが、酒屋は見たことがありません。飲食屋台やフードコートでも、飲み物は原則持ち込み可なのでそれらの店は別にあるようです。
※ 飲料持ち込みは東南アジアでも国によります。マレーシアではフードコートに飲み物専門店があるので持ち込み不可。イスラム教国なので飲酒できるフードコートも限定されています。

Q 買ってきたテイクアウト飯はどうやって食べますか?
A 物によりますがビニール袋やプラ容器に入れてくれます。箸・スプーンなども付けてくれますし、ソース、スパイスもくれるので特別な用意はいりません。
ただビニール袋から直接は食べにくいし、写真も撮りにくいのでトラタロウはプラスチックのトレイを持参、それにビニール袋をかぶせて皿にしています。食べ終わったらビニール袋を捨てるだけ。
ゲストハウスなどでは皿を貸してくれたりします。
トラタロウが今回食べたテイクアウト飯の盛りつけ例です






お店でプラ容器をくれました
※ 1回の費用は様々ですが今回2025年1月(1バーツ=¥4.5)の旅行では2人で4~6品買って、¥400~¥600ぐらいでした。
※ お宿で食べる場合は、当然ですけど食べこぼしが無いように気をつけましょう。汚れるだけでなく、蟻が来るのでいやがられます。
これがテイクアウト飯です
今回の旅行で撮った写真を中心にタイのテイクアウト飯の例を紹介します。
お菓子・スナック類は別なテーマとして紹介したいので含まれていません。
① 焼き物
夜市では香ばしい煙をあげて焼かれるため、ひと際食欲をそそるのが焼き物。昔は炭火焼がほとんどでしたが、だんだん電熱器が使われるようになるのはしかたないですね。

① ガイヤーン
ガイ(鶏)+ヤーン(炙り焼き)。
ナンプラ(魚醤油)とハーブ・スパイスの漬け汁で下味がつけられた肉を焼きます。
日本の焼鳥ほどではないですが、ある程度部位に分かれています。若鶏一羽を豪快に開いて丸焼きした物もありました。
ツクネ(タイ語でルークチン)も焼いていますが、味付けは甘め。


タイ東北部イサーン地方の名物ですが、現在は全国に広がっています。イサーンではソムタム(パパイヤサラダ)、カオニャオ(もち米おこわ)と組み合わせて食べます。


② タイソーセージ
ドイツのヴルスト、中国の臘腸(ラプチョン)、ベトナムのラプスオンなど豚を良く食べる地域で発達するのがソーセージ。タイも豚食地域ですので、スパイスを効かせた北部のサイアウ、発酵させた酸味のある東北部のサイクロークイーサンなどの各種ソーセージが食べられます。




➂ コムヤーン
豚の肩から頬のかけての肉は赤身と脂肪がほどよく混じった霜降りの「豚トロ」(ブタのトロです)。
これをナンプラベースの調味液に漬け焼き上げました。ご飯にのせてお弁当仕立てにするとベトナム名物のコムタムとほぼ同じで美味。


④ プラーパオクルア
プラー(魚)+パオ(焼く)+クルア(塩)。大型の魚(内陸部でこの形はティラピアかな)に塩をドッサリまぶして焼き上げます。食べるとき表面は剥がすのでそんなにしょっぱくはないです。


⑤ カオジー
焼きおにぎりタイにもあったんだ。カイニャオ(もち米)ごはんにナンプラ入り卵黄を塗って焼きました。元々はラオ族の料理でタイでも東北部イサーン地方限定かな。


⑥ ムーピン
豚肉の串焼きです。焼鳥に比べるとめったに見ない。


② 揚げ物
料理をするタイ人家庭でも揚げ物はあまりやらないかな。大量の油を使い、その始末も必要な揚げ物を家庭でするのは大変ですから。
① トートマンプラー
トート(揚げる)+マン(練る)+プラー(魚)。長持ちしない生魚の保存法のひとつが「さつま揚げ」ですが、そのタイ版。練った魚肉にハーブやスパイスを加えているのがタイらしい。
煉り物がイカだとトートマンの後がプラームック、エビだとクンになります。


② クントート
名前のまんまエビのかき揚げ。店や地域によってエビの大きさがちがう。これを太めのスープ米麺に入れたら絶対美味しいですね。


➂ カイトート
これも名前のまんまのフライドチキン。そんなにタイらしさは感じないが普通に美味しい。



④ ポピアトート
ポピアは春巻の総称で、トートなので揚げ春巻き。生春巻もあります。
揚げる食品は豚肉、ワンタン、ニンニク、イモ類など多彩。タイ人はかなり揚げ物好きのようです。
➂ 蒸し物
やはり中華料理の影響が強いのか蒸し物料理がかなりあります。どう見ても中国起源の蒸し物が沢山ありました。

① カノムジープ
タイ風の焼売で皮が黄色いのが特徴。カノムは「お菓子」ですが一口大のスナック的な食べ物にも使います。ジープは「ひだ」を意味。
② ギアオヌン
これも皮が黄色い蒸し餃子(厚めのワンタンかもしれない)。中国には日本のような焼き餃子はほとんど無く、蒸しか茹で餃子が基本。タイでも同じようです。日系飲食店以外では見たことはありませんが、日本風焼き餃子も広まるかも。
※ 中国の餃子に関してはこちらもご覧ください
世界のB級グルメ/04 餃子 in 中国 に移動します
➂ サラパオ
中華まんですが中国で饅頭(マントウ)は主食として食べる具の入らない物。具が入る中華まんは包子(パオズ)と呼ばれ、その南方表現の焼包(シャオパオ)がタイに伝わりサラパオになったのでしょう。豚挽肉まん(サラパオムーサップ)を始め、あんまん、角煮まん的な物もあります。
フィリピンではショーパオと呼ばれています。


④ クィッティアオロート
中国南部の腸粉とほぼ同じ食品。クィッティアオは米製の麺ですが、液状にして蒸して作る米粉シート(これを切れば麺になる、ベトナムのフォーと基本同じ)で具を包んでいただきます。


⑤ カノムチョームアン
宮廷料理が発祥で、専用ピンセットできれいな花模様を作ったりするようです。
これは市場飯なので飾りはシンプル。青い物はバタフライピーという花で染めた物。
もち米粉の生地に甘くない具を包んで小型の蒸し器で調理していました。


⑥ カノムクイチャイ
クイチャイはニラを意味。タピオカデンプンと米粉で作った生地にニラを混ぜ蒸します。ニラ以外にも挽肉や野菜などのバリエーションが豊富。蒸しただけでもモチモチで美味しいが、下の画像は鉄板で焼いた物は表面がカリッとして別の食感が生まれます。揚げてもOK。


ナムチム(つけだれ)でいただく
⑦ カオニャオ
タイ東北部イサーン地方でよく見るのが独特の形をした蒸し器でもち米を蒸す風景。イサーン地方はもち米が主食のラオスに隣接し、ラオ族も多いためカオニャオ(もち米)もよく食べるのです。
もち米は粘りが強く、鍋炊飯では対流がうまくいかないので蒸す調理がベスト。イサーンでは名物のガイヤーン(焼鳥)、ソムタム(パパイヤサラダ)と食べるのが人気です。

下の鍋はモーヌンと言います

⑧ ホーモックプラー
南部発祥の料理だが各地に広まりました。魚すり身にレッドカレーペースト、ココナッツミルクを加えて蒸した物。蒸し皿になるバナナ葉の皿がいい感じ。
「ホーモック」は包むと覆うという意味ですが、「仲良く同調する」というニュアンスもあり、様々な食材がうまく混じりあっている様を表わすのでしょう。プラーは魚でメインの具によって語尾がガイ(鶏)プー(蟹)などに変わるそうです。


⑨ サークーサイムー
サークーはデンプンが取れるヤシのひとつサゴヤシのこと。サゴヤシデンプンで作った小さな粒(タピオカパールの小型版)に甘じょっぱい豚肉の具を包んで蒸しました。
現在はサゴデンプンは高いので、安いタピオカ(キャッサバのデンプン)で作るのが普通みたい。
日本で片栗粉(本来はカタクリという植物のデンプン)と呼ばれても実際はジャガイモのデンプンなのと同じような関係かな。
④ 汁物・煮物
タイでゲーン(ケーン)とゆうとスープや汁気の多いおかずの総称で、ご飯と合わせることが多いです。
日本ではまとめてタイカレーと呼ばれたりします。ゲーンペッ(辛い汁物の意)=レッドカレー、ゲーンキアオワーン(緑の甘い汁物の意)=グリーンカレー、ゲーンガリー(カレーの汁物の意)=イエローカレーと見た目の色での大雑把なくくり。辛くない物もあります。

市場に行くとラーンカオゲーンという店があります。ラーン(店)+カオ(ご飯)+ゲーン(汁物)でおかずとご飯の店。各家庭で買われる他に勤め人がおかずとご飯を買ってお弁当にします。
夜市にもビニール袋に詰めたゲーンを売る店があり、炒め物、煮物、ラープ(肉・野菜・ハーブなどのあえ物)もあったりします。


値段は種類×量ですが、あまり大量に買って食べきれないと困ります。「ひとすくい分」(ジェスチャーでいける)とか「○バーツ分」(お金をみせればOK)とかで買いましょう。足りなければ追加はできますが、逆はダメですね。
※ 美味しそうと思って買ったら漬物みたいな物で「すごくしょっぱい」時もありました。味見はできないのでしょうがないね。

青唐辛子を使っています

トムカーカイ


⑤ 麺類
麺類もテイクアウト可能。スープ麺でもスープと麺・具を別のビニール袋に入れて持ち帰れますが、温められないとあまり美味しくはありませんね。
夜市などのお持ち帰り麺類はヤキソバ系が多いようです。麺とゲーンを買って自分好みのひと皿を作ることも可能です。
小麦粉麺が主流の日本に対して、昔から米の生産量が多かった東南アジアでは米製麺が中心。
昔の日本は米生産量が低くて、米粉麺なんて作る余裕はありませんでした。


テイクアウトに適しているのは、冷めても美味しい太い米麺ナンプラ炒めがベストです。


いろいろ食べてみましたがバミー(中華麺)は冷たいと美味しくない。旅行者はキッチンが使えるゲストハウスなどに泊まらなければ再加熱が難しいのでオススメできません。

温められないと美味くない

カノムジーンというソウメンみたいな麺があります。米粉生地を細く押し出して茹であげる押出し麺で、加熱してあるのでそのまま食べられます。前述のゲーン(タイカレー)を買って、カノムジーンにかければ自分好みの麺料理が作れます。


※ 麺専門店・屋台の各種麺類については別項目でまとめる予定です
⑥ 野菜類
市場に行けば様々な熱帯の野菜類は売られていますが、調理器具を持たない旅行者には果物以外は買いにくいもの。テイクアウトでも野菜物が手に入ります。
① ソムタム
一番簡単に入手できる野菜物が青パパイヤのサラダであるソムタム。食堂、市場、街頭、夜市などでクロック(臼・うす)とサーク(つき棒)が置いてある店があればソムタム屋。どの店でもテイクアウト可能。
タイ東北部イサーン地方の名物でしたが、現在は全国に広まりタイを代表する料理のひとつです。
細切りにした未熟なパパイヤ(甘くなく野菜として利用)にトマト、インゲン、ピーナッツなどを加えナンプラ、干しエビ、ライム、トウガラシなどで味付け。味をなじませるため臼に入れて棒でたたくのがお約束。ソム(酸っぱい)+タム(たたく)の所以(ゆえん)ですね。
トウガラシ(プリック)は数を指定しますが、普通の日本人なら1~2本で十分。何も言わずに現地人レベルで入れられると食べられなくなる可能性があります。





ナムプリック

手前は揚げ卵
旅行者の食事は野菜が不足しがち。手軽に野菜を補給できるのはありがたいです。
⑦ その他
商売なので売れそうな物なら何でも扱います。周辺諸国の食物、日・韓、欧米とバラエティー豊か。












よほどタイ料理の知識があるか、タイ語が堪能でないかぎり屋台・ローカル食堂での食事は定番しか注文できません。現物を見て指さし注文できるテイクアウト飯は、バラエティーも豊かで何種類も買えるので飽きませんね。
テイクアウト食品のすべてを紹介できた訳ではありませんし、地域によっても変わるでしょうが参考になれば幸いです。
※ タイの屋台やローカル食堂についてはこちらをご覧ください
世界のB級グルメ/22 屋台・ローカル食堂飯 in タイ
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